| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB1-079 (Poster presentation)

単体サンゴとホシムシの共生系における生態と生活史

井川桃子(京大,人環)

イシサンゴ目のスツボサンゴ属とムシノスチョウジガイ属のサンゴは、砂泥底で非固着生活を営む単体性のサンゴである。これらのサンゴの内部にはホシムシが棲み込み、サンゴを引きずって動いている。このホシムシの運動がサンゴの移動を可能にし、また砂泥中への埋没からサンゴを救出する。一方、これらのサンゴはホシムシを捕食者から防衛している。本研究では、このようなサンゴとホシムシとの共生関係について、(1)両者の宿主特異性、(2)共生の成立と維持の過程、(3)両者の利害関係の実態を明らかにすることを試みた。そこで、沖縄本島の金武湾でスツボサンゴとムシノスチョウジガイを採集し、サンゴとホシムシのサイズの関係を調べ、ホシムシの分子同定を行い、パートナーを失った場合のサンゴとホシムシそれぞれの適応度を調べた。その結果、サンゴとホシムシのサイズには正の相関が見られ、サンゴとホシムシの成長が同時進行していることが示唆された。さらに2種のサンゴ間では、ムシノスチョウジガイに棲むホシムシの方が体型が太短い傾向が認められた。これらのホシムシの分子系統樹を作成したところ、ホシムシは2つのクレードに分かれ、いずれのクレードに属するホシムシも2種のサンゴの両方に棲み込んでいた。以上のことは、ホシムシの体型がホシムシの遺伝子によって決まるのではなく、共生するサンゴに合わせて変化することを示唆している。また、サンゴおよびホシムシのいずれの死もパートナーの適応度を著しく下げることが明らかになった。これらの結果は、可動サンゴと寓居ホシムシの間に賃貸共生とも言うべき相利共生の関係が見られることを示唆している。


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