| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB1-082 (Poster presentation)

震災後の北太平洋マダラの個体群動態解析

*梶 圭佑(横浜国立大学),松田裕之(横浜国立大学),増田 義男(宮城県水産技術総合センター)

【背景】東日本大震災により水産業は様々な影響を受けた。津波により漁船や漁具が損壊する被害や原発事故に伴う水産物の出荷制限・操業自粛による漁獲量低下という被害が生じた。そこで本研究では、震災後から出荷制限などの指示を受け、漁獲努力量の減少が顕著だった北太平洋群のタイヘイヨウマダラの資源量変化に注目した。

【目的】北太平洋マダラの資源量の変化を定量的に調べることを目的とした。震災前と同じ水準で震災後も漁獲を行っていた場合を想定した資源量推移および今後の資源量推移、漁獲可能量について解析を行った。

【方法】水産総合研究センターにより算出された推定資源量データを用いて余剰生産モデルを当てはめた。余剰生産モデルは資源量B、漁獲量Yを変数とする式であり、最尤法により自然増加率rを求めた。求めたrによって、まず震災前と同様の漁獲をした場合の2011―2013年の資源量推移を求めた。

【結果】余剰生産モデルを用いて2011―2013年に一定の漁獲があったと仮定する場合、2013年までに資源量は4.4万トンまで減少し、震災前の例年の資源量と同じ水準となった。また、2014年以降、5年間一定の漁獲をすると仮定した場合、2018年までに資源量は13.5万トンまで減少したが、2012年とほぼ同じ水準となった。また、この5年間の漁獲量はいずれも震災直後3年間の平均よりも約2-4倍増加していた。

【考察】北太平洋のマダラの資源量は震災後に通常の漁獲をしていたと仮定した場合の解析結果では急激な増加傾向はみられず例年と同じ水準の資源量だったことから、震災後の漁獲規制が無ければ資源量の著しい変化は無かった可能性が推察された。また、2014年から5年間一定の漁獲を行った場合、資源量は2012年水準まで減少するものの漁獲量は約3倍だった。


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