| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB1-089 (Poster presentation)

連続的な捕獲圧によるニホンジカの活動パターンの変化

*池田敬(農工大),高橋裕史(森林総研関西),伊吾田宏正(酪農大),松浦友紀子(森林総研北海道),東谷宗光(酪農大),吉田剛司(酪農大),竹下和貴(農工大),梶光一(農工大)

近年、ニホンジカ(以下、シカ)は生態系や農作物などに重大な影響を与えており、捕獲が全国各地で行われている。しかし、シカの活動パターンや行動に与える捕獲の影響を評価した事例はない。そこで、本研究は捕獲圧の異なる同一地域でカメラトラップ法を用いて、これらの関係性を評価した。

調査は2012年~2014年に北海道洞爺湖中島で実施した。本調査地では、2012年度に57頭、2013年度に148頭のシカを捕獲した。活動パターンは日の出・日中・日の入り・夜間の撮影頻度を季節毎で算出した。また、2012年と2013年の捕獲要因(累積捕獲数・前日の捕獲数)と夜間の撮影頻度の関係性を評価した。警戒レベルは警戒・非警戒姿勢を区分し、捕獲前・捕獲中・捕獲後で算出した。

2012年春-秋や2013-14年春での日の出・日の入りの撮影頻度は日中・夜間よりも高かった。日中の撮影頻度は2012-13年春では夜間よりも高かった一方で、2013-14年夏・秋では夜間の撮影頻度が高かった。また、累積捕獲数は両年、前日の捕獲数は2013年で夜間の撮影頻度を増加させた。警戒レベルは他の期間よりも捕獲前で著しく低かった。また、捕獲後は2013年の捕獲中よりも警戒レベルが低かった。

捕獲はシカの活動パターンに強い影響を与え、シカは夜間の活動性を高めることが示唆された。特に、捕獲圧が強い場合、シカはすぐに活動パターンを変化させると考えられる。また、シカの警戒心は捕獲に捕獲前より著しく高くなり、捕獲後でも依然として高い警戒心を持つことが示唆された。


日本生態学会