| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB1-114 (Poster presentation)

ヒモハゼによる巣穴利用の日周変化

邉見由美, 伊谷行(高知大・教)

ハゼ科魚類は様々な環境に適応進化したグループであり、生物との共生関係も多様な環境下で見ることができる。なかでも、熱帯サンゴ礁域では、ハゼ類とテッポウエビ類との共生関係が発達しており、海洋環境における相利共生の典型的な事例として、多数の研究が行われてきた。一方、温帯の干潟域では、ハゼ類とアナジャコ類との片利共生関係が見られるが、研究例は少なく、ハゼ類による巣穴利用の実態は明らかになっていない。アナジャコ類の巣穴を利用するハゼ類としては、日本ではウキゴリ属の多数の種が知られており、今後の研究が期待されるが、ウキゴリ属の外群に位置するヒモハゼ属のヒモハゼEutaeniichthys gilliでも、アナジャコ類の巣穴利用が確認されている。従って、ヒモハゼの巣穴利用特性の解明により、ウキゴリ属における巣穴利用の多様化に関する手がかりを得ることが出来ると考えられる。これまで、Henmi and Itani(2014)により、ヒモハゼの巣穴利用については、実験室内の水槽に宿主の巣穴を再現させ、行動観察を行うことで、日中の冠水時に、捕食者のいない状態でヨコヤアナジャコUpogebia yokoyaiの巣穴へ頻繁に出入りし、数秒から数分間の利用を繰り返すことが明らかになっている。本研究では、ヒモハゼによる巣穴利用の日周変化を調査することにより、ヨコヤアナジャコの巣穴への依存度の高さを解明することを目的とした。Henmi and Itani(2014)と同様に宿主の巣穴を再現させ、照明の有無によって明暗条件を設定し、ビデオカメラを用いて午前、午後、夜間の時間帯のヒモハゼの行動を詳細に観察した。その結果、ヒモハゼは、午前において最も巣穴利用の頻度や総滞在時間が多く、夜間にかけて巣穴利用の頻度や総滞在時間が短くなることが示唆された。本研究における巣穴利用の日周変化における傾向から、ヒモハゼの巣穴へ対する依存度について考察する。


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