| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB1-167 (Poster presentation)

樹林化がもたらす生物相の変容 ‐全国河川を対象とした鳥類分布の時系列解析‐

*藪原佑樹(北大院農),赤坂卓美(帯広畜産大),山浦悠一(森林総研),中村太士(北大院農)

近年、気候や地形に加えて、人間活動も広域の生物分布に影響を及ぼすことが指摘され、国土利用の変遷に伴うマクロスケールでの生物分布の変化に注目が集まっている。日本の河川では、ダム建設や河川改修に伴い、樹林化による氾濫原の景観変化が急速に進行してきた。地域スケールの研究から、樹林化により、河原に生息する生物種が減少する一方で、森林性生物は増加することが明らかになっている。しかし、気候や土地利用が異なる他地域においても同様に、樹林化が生物分布を変容させるかは明らかにされていない。

そこで本研究では、河川水辺の国勢調査を用いて、樹林化に伴う鳥類分布の変容を全国の河川で明らかにした。鳥類の個体数変化の指標は、1996-2000年(Ⅱ期)と2001-2005年(Ⅲ期)の鳥類調査で確認された各種の相対個体数の幾何平均とした。これらの種を生息環境に基づいて森林性、草地性、河原性に区分し、機能群ごとに個体数変化の指標を統合した。さらに、1980年代以降に樹林面積が拡大し、氾濫原に一定割合以上の樹林面積が存在する場所を樹林化地点として、樹林化した場所における鳥類の個体数変化を明らかにした。

解析の結果、樹林化地点における河原性鳥類の減少は、樹林化していない地点と比べて顕著に大きかった。一方で、草地性および森林性鳥類の個体数変化は、地域間で異なる傾向を示したが、樹林化との関係は認められなかった。これらを踏まえ、本発表では、樹林化および鳥類の応答の地域差に触れながら、鳥類保全に向けた河川管理について議論していきたい。


日本生態学会