| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB1-168 (Poster presentation)

拡がるアライグマ : 北海道十勝地域のケース

*山口英美(岩手連農), 高田まゆら(東大), 藤井啓(OATアグリオ), 小林恒平(千葉科学大学), 今井邦俊(帯畜大・新興再興), 門平睦代(岩手連農)

外来種アライグマの野生化は、北海道において1970年代に道央で起こったペット個体の逃亡を皮切りに各地で確認されるようになった。道東の十勝地域では2000年代から野生化が確認されている。十勝地域においてはアライグマによる農業被害は軽度なためアライグマの野生化は軽視されているものの、今後分布の拡大や密度の増加が生じた場合は農作物や家畜飼料の食害といった経済的損失に加え、ニホンザリガニなどの希少在来種等への悪影響や病原体伝播によるヒトや家畜への健康被害が懸念される。そこで、十勝地域におけるアライグマの分布の変遷を追い、繁殖状況や生息場所に特徴的な景観から今後の分布拡大について検討を行うとともに、食性調査を行い十勝地域のアライグマが農業や生態系に与えている影響を推定した。

十勝地域における過去のアライグマ捕獲情報の空間パターンを時系列で追い分布の変遷を視覚化したところ、年々捕獲場所は拡がっており、胎盤痕数から推定した妊娠率・産子数はいずれも十勝地域の個体は他地域と比べ高値を示した。過去に実施されたフィールドサインの調査結果をもとに行った解析の結果、フィールドサインの確認された景観はされなかった景観と比べ人工建造物に乏しく、畜舎の多い傾向にあった。また、捕獲個体の胃内容物の半数から家畜飼料が検出され畜舎を高頻度に利用していることが示唆された。

現段階で十勝地域のアライグマは高い繁殖力を有しており更なる分布の拡大、密度の上昇が予想される。今後は、アライグマの生息に重要な役割を持つと考えられる畜舎の存在を考慮にいれ、対策を行っていく必要があるだろう。


日本生態学会