| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB1-186 (Poster presentation)

河川食物網の流程変化-ダム湖生産物から河道内生産物への急激な移行-

*神崎東子(弘前大・農生),東信行(弘前大・農生)

青森県中津軽郡西目屋村の白神山地に水源を発する岩木川は津軽平野を潤す一級河川である。岩木川水系は流域開発によりダム建設や農地などの人為的改変により河川の自然環境は大きく変化していることが予想されるが、それらがどの程度河川生態系の物質循環に影響を及ぼしているかの知見は乏しい。そこで、魚類、水生昆虫、付着藻類、粒状有機物を材料として炭素・窒素安定同位体分析、微量元素分析を行い、流下過程における物質循環の動態を把握することを目的とした。炭素安定同位体分析の結果から、ダム湖由来の植物プランクトンがダム直下の食物源となっており、流下過程にそってδ13Cがしだいに上昇していくことから比較的速やかに河道内生産物が主となる物質循環へと移行していくことがわかった。また窒素安定同位体比からは流域内にほとんど森林しか存在しないダムより上流ではδ15Nはほぼ3‰に近い値を示していてほとんど値が変わらないのに対し,ダムより下流では下流に行くに従って次第にδ15N の値が上昇していた。これは下流に行くにつれリンゴ園や人家から排出される窒素・栄養塩の負荷が顕著であるためと考えられる.このことから窒素安定同位体比を用いて流域の窒素負荷を評価できることが明らかとなった。また微量元素分析から複数の微量元素が夏季にダム湖湖底から溶出していることが認められたが、河道内への放流後、急速な沈降が推定される結果を得た。


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