| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB2-025 (Poster presentation)

琵琶湖内湖における生物多様性とその地理的変異の要因

*酒井陽一郎(京大生態研), 柴田淳也(広島大学), 合田幸子, 山口真奈, 谷内茂雄, 中野伸一(京大生態研), 奥田昇(総合地球研)

琵琶湖周縁部には内湖と呼ばれる小規模な付属湖が存在する。内湖は、多くの水生生物が生息や繁殖の場として利用しているため、生物多様性の維持に重要な生態系とみなされる。しかしながら、集水域の土地利用変化に伴う水質悪化や外来魚の侵入等により、環境の劣化と多様性の減少が指摘されている。このため、内湖の生物多様性低下を導く駆動因の解明は、琵琶湖集水域全体の保全に対して重要な課題である。本研究では各内湖における既存の在来魚類とベントスの群集データを用い、内湖の環境要因および琵琶湖と内湖とのネットワーク構造が生物多様性に与える影響について解析した。さらに、集水域の土地利用様式に関するGISデータを用い、内湖環境を悪化させる人為的な駆動因について検討した。従来の知見に反し、種多様性を目的変数とした今回の解析の結果、ネットワーク構造の有意な効果は検出されず、各内湖の環境によって種多様性は説明された。在来魚の出現種数はブルーギルの個体群密度の増加によって有意に低下した。侵略的外来種であるブルーギルは、その捕食や競争により在来生物群集に大きな影響を与えることが知られるが、内湖においても同様の効果があると示唆された。一方、ベントスの種多様性は、特に内湖における濁度の増加に伴って減少した。底生食者が主であるベントスは、水柱の懸濁物の影響を直接受けるとは考えにくいため、懸濁物の増加に伴う湖底環境の悪化がベントス多様性を低下させたと考えられる。また、内湖の濁度は、全窒素および集水域の人口密度と有意な正の相関を示したことから、人為起源の窒素負荷が内湖の濁度を増加させる可能性が示唆された。多くの内湖が存在する農村集落集水域において人為的な窒素負荷を削減するには、小規模な排水処理場の整備が必要であろう。


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