| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB2-121 (Poster presentation)

沖縄本島周辺に生息するアオウミガメの生息地選択

*林 亮太(西水研), 西澤 秀明(京大・情報)

アオウミガメを含むウミガメ類は、砂浜で孵化して海に向かって以来、甲長30cm前後までの期間を『ロストエイジ期』(見失う期間)などと呼び、その間どこでどのように過ごしているかほとんど明らかになっていない。外洋で流れ藻などと一緒に表層で過ごしているのではないか、と推察されているが、その生活史には未だ不明な点が多く残されている。アオウミガメはそのロストエイジ期を終えると沿岸に移動し、海草などを食べる草食生活に入るとされているが、その外洋-沿岸域の行き来について、一度沿岸に移動するとずっと沿岸に定着する一方向説と、沿岸に定着後もしばしば外洋に出て何回も生息地を変える変動説の二つの説がある。本研究では、沖縄本島の太平洋側と東シナ海側で捕獲されたアオウミガメ2群について、遺伝的解析と体サイズの比較を行った。その結果、どちらのアオウミガメ群もミクロネシア海域と小笠原諸島で生まれたと推定される個体を含む混成群で、ハプロタイプ頻度に有意な差が見られないことが明らかになった。一方で、体サイズを比較してみると、宜野座村定置網で捕獲されたアオウミガメには小型の個体が多く、都屋漁港定置網で捕獲されたアオウミガメは成熟した成体サイズの大型の個体が多い傾向が見られた。このことは、アオウミガメは成長段階ごとに利用する海域の好みが異なり、沿岸域を移動している可能性を示唆している。このことは、一口に沿岸域といっても多様な環境が必要であることを示唆する。海洋環境保全におけるウミガメ生息地への取り組みは産卵環境を主として環境影響評価が行われているのが現状だが、成長段階に応じた各生息海域の再評価が必要であると考えられる。


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