| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB2-123 (Poster presentation)

阿蘇地域におけるオオルリシジミ生息地の環境復元

*村田浩平(東海大・農)・岡田 工(東海大・チャレンジセンタ-)・土屋守正(東海大・理)

オオルリシジミ九州亜種は,環境省絶滅危惧ⅠB類に指定され,絶滅が危惧されている草原性のチョウである.これまでの我々の研究から,本種の生息地の保護には,継続的な早春の野焼きによる植生の遷移の停止と,適切な放牧圧の維持によるシバ・ネザサ草原の維持が重要であることが明らかになっている.しかしながら,近年,阿蘇地域では,放牧農家戸数の減少による放牧牛の減少により,同地域において適切な放牧圧の維持が困難な放牧地が増加し,本種の生息できる草原環境は減少傾向にあることが分かってきた.

本研究は,本種の生息地の環境復元に必要な放牧地の管理を明らかにすること,復元策を実施した場合の効果の判定法の開発を目的として,学生によるボランティア組織の協力を得て,本種の個体数が激減している同地域内の休牧中の牧野において,本種の不法採集防止のための定期的な監視活動,野焼き,除草などの草原管理を行ったところ,本種の生息地の環境復元には,①早春の継続的な野焼きによる植生の遷移の停止とスミレなどの蜜源植物の保護,②草原に侵入した外来植物の駆除による幼虫の食草であるクララの保護,③草原の状態に合わせた年に複数回の除草などが必要であり,不法採集防止の巡回により,本種の終齢幼虫の採集を防止することも地域個体群の安定につながり,生息環境の復元策として有効である可能性が高いことが示唆された.


日本生態学会