| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB2-142 (Poster presentation)

ヤンバルクイナ(Gallirallus okinawae)の交通事故の増加とその発生傾向

*比嘉瑞希,山本以智人(環境省やんばる野生生物保護センター),長嶺隆,中谷裕美子,金城道男(NPO法人どうぶつたちの病院沖縄),大沼学,羽賀淳(国立環境研究所),阪口法明(環境省那覇自然環境事務所)

ヤンバルクイナは沖縄島北部地域(以下、やんばる地域)のみに生息する固有種で、環境省レッドリストⅠA類に掲載され、個体数は約1500羽と推定されている。環境省及び沖縄県が実施する外来種のフイリマングース(Herpestes auropunctatus)の防除事業の進展に伴い、本種の生息数及び生息域は回復傾向にある。一方、近年ヤンバルクイナの交通事故が多発しており、その対策が課題となっている。

本研究は、2008~2014年に環境省やんばる野生生物保護センターに収容されたヤンバルクイナの死亡個体及び救護個体の中で、収容要因が交通事故と判定されたサンプルから交通事故の発生状況を明らかにした。その結果、本種の交通事故件数は年々増加傾向にあり、過去最多の2012年の交通事故死亡個体数45羽は推定個体数の約3%にあたると推定された。一年のうち、繁殖期にあたる4~6月の交通事故が最も多く、その多くは成鳥であった。一方、7月と8月はほとんどが当歳の幼鳥及び若鳥の事故であった。また、本種の事故は日中ほぼ全ての時間帯で発生しているが、6~8時、16~17時に特に多く発生しており、早朝や夕方は採餌等のためにヤンバルクイナの行動が活発になることや、通勤通学等の時間と重なることから交通量が多くなるためと推測された。さらに、交通事故発生地域が広がってきている傾向が見られた。これはヤンバルクイナの生息域の回復を反映していると考えられる。今後、さらに本種の交通事故件数が増加し発生場所も拡大する恐れがあることから、上記の発生状況を踏まえたやんばる地域全域での交通事故対策が急務である。


日本生態学会