| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB2-169 (Poster presentation)

ニホンアカガエルの個体群衰退をもたらす要因の検討―衛星画像データを用いた要因解析―

*木寺法子,角谷拓,山野博哉,深澤圭太,高村典子(国環研),小賀野大一(千葉県),若林恭史,竹澤真人,長谷川雅美(東邦大)

ニホンアカガエルは冬季から初春に水田等の開けた浅い水域に産卵する日本固有のカエルであるが,その個体数は近年激減しており,圃場整備や耕作放棄による産卵期の水域減少が問題視されている.本研究では,繁殖期の湛水面積の変化が個体群動態に与える影響を定量的に評価することを目的として,衛星画像を用いて冬季耕作地における湛水面積の時空間変動を明らかにし,卵塊数の長期変動データとの関係を解析した.

1993・1996・2002・2014年の1月から3月に千葉県の谷津田,計30か所で野外調査を実施し,卵塊数の長期変動データを得た.衛星画像解析には,各年の冬季に撮影されたランドサット画像の中間赤外バンドを用いた.現地調査により取得した冬季の湛水域分布情報から耕作地における湛水域とそれ以外の地域の分類をおこなった.これにより各年,各調査地の湛水面積率を算出した.繁殖を制限する要因として湛水面積率,繁殖期外の生息制限要因として圃場整備の有無と耕作放棄率を同時期の航空写真から,また森林面積率をGISデータから算出し,これらを説明変数とする統計解析をおこなった.

解析の結果,卵塊数変動に対し湛水面積率は森林面積率と同等の正の影響を与え,圃場整備の有無はそれらの約1.5倍の負の影響を与えることが示された.冬季の湛水面積は,多くの水生動植物の生育・生息環境要因として重要な役割を果たしていると考えられる.衛星画像にもとづく本手法は,広域かつ長期にわたる要因の変化を定量化できるため,これらの生物の分布変化や動態の理解・予測への活用が期待される.


日本生態学会