| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB2-216 (Poster presentation)

ニホンミツバチに寄生するアカリンダニの分布調査と遺伝子解析

*坂本佳子(国環研),前田太郎(生物研),大島一正(京都府大),五箇公一(国環研)

ニホンミツバチApis cerana japonicaは日本固有種で、花粉媒介やはちみつの生産など、生態系や農業を支える重要な役割を担っている。2010年、ニホンミツバチ群の巣門周辺で多数のワーカーが死亡する症状が報告され、アカリンダニ症によるものと診断された。アカリンダニ症とは、ミツバチの胸部気管内にアカリンダニAcarapis woodi(ホコリダニ科)が高密度で寄生することにより飛翔困難となり、最終的に群が崩壊する疾病である。アカリンダニは1905年にイギリスで初めてセイヨウミツバチApis melliferaにおいて確認され、この100年の間にヨーロッパ、南北アメリカを中心に分布を拡大したと考えられている。日本では、上述のニホンミツバチの例が初記録で、今後、アカリンダニの分布拡大が、わが国のミツバチの脅威となる恐れがあるため、早急にダニの分布および感染経路を特定するが必要がある。そこで本研究では、アカリンダニの全国的な分布状況を把握するため、ニホンミツバチおよびセイヨウミツバチの野生群および飼養群からワーカーを採集し、気管を検鏡することにより寄生の有無を調査した。また、ミトコンドリアDNAのCOI領域およびリボソームRNAの18S-28S領域の遺伝子解析を行い、海外からのアカリンダニの侵入可能性を探った。分布調査の結果、ニホンミツバチでは東日本を分布中心としてほぼ全国的に寄生が認められた。一方、セイヨウミツバチでは寄生は確認されなかった。9都府県から採集したアカリンダニのDNA解析の結果、いずれの領域でも全ての個体が同一の配列もしくは同様の波形を示し、データベースに登録されている国外産の配列と一致した。このことから、日本で分布が確認されたアカリンダニは国外由来の侵入種で、国内では単一系統が分布を拡大している可能性が高いと考えられた。


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