| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB2-224 (Poster presentation)

小さくても輝くまち”綾町”における生物多様性地域戦略策定の試み

河野円樹(綾町エコパーク推進室)

綾町は、宮崎市から北西約24kmの場所にある人口約7300人の小さい町である。綾町の北西部には九州中央山地南端部の大森岳が存在し、その両側を南東方向に流下する綾北川と綾南川が合流する沖積平野を中心に町並みが存在している。周辺地域では、最低標高は東端の15m、最高は北端の掃部岳1,223.4mである。植生は、イチイガシやコジイ、タブノキに代表される照葉樹林帯からブナが優占する夏緑広葉樹まで幅広く、多様である。 綾町の照葉樹自然林の規模は日本最大級とされており、その恵みを生かした自然生態系農業を約半世紀にわたり推進してきた。また、綾町には伝統的生活文化の知恵を大事にし、行政と22の自治公民館の人々がスクラムを組んだ独特の歴史がある。こうした長年の取り組みが評価され、2012年には、国内で32年ぶり、国内で5番目のユネスコ エコパーク(BR : Biosphere Reserves)登録地となった。当時、自治体主導での登録は初めての試みであった。

一方、2008年、生物多様性基本法の中で生物多様性地域戦略の策定の努力義務が規定されたことをうけ、綾町においても2012年から、綾町、てるはの森の会、日本自然保護協会の3者で新たに「綾生物多様性協議会」を設立し、生物多様性地域戦略の策定に取り掛かった。綾の生物多様性やこれまでの数多くの取り組みをまとめ、今後の地域づくりに活かすための計画である。「いのち豊かな綾づくりプラン」という親しみやすい名称を掲げるほか、現地のイメージイラストを活用するなど、より地域の現状にあわせた内容になっている。本計画が、ユネスコ エコパークのまち綾町として、将来にわたり「自然と共に生きる綾町」であり続けるための道しるべとなることが期待されている。


日本生態学会