| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


シンポジウム S05-2 (Lecture in Symposium/Workshop)

火山灰土壌の分布と物理化学的特殊性

渡邉哲弘(京大・農)

火山灰土壌は、火山砕屑物を主要な材料とした生成初期の性状が際立った土壌である。本発表では火山灰土壌の分布と性質を概説した後に、土壌の性質に与える火山灰の影響について論じたい。

火山灰土壌は、アメリカの土壌分類においては、その分布面積が地表の0.8%と小さいにもかかわらず、Andisolsとして12の最高位カテゴリーの1つとして分類される。日本では火山が多く分布することもあり、火山灰土壌は地表の約1/6を占めている。火山灰土壌の一般的な特性は、表層に多量の有機物を集積しており黒色を呈すること、容積重が小さく軽しょうであり保水性に富むこと、リン酸吸着量が極めて大きいことである。これらの特性は火山灰の風化に伴い生成するアロフェン、イモゴライト等の低結晶性の鉱物に起因する。これらの鉱物は極めて大きい比表面積を持ち、化学的に活性なAlやFe(活性Al・Fe)であるために、有機物やリン酸を多く吸着する。また、アロフェンやイモゴライトが中空状の構造を持つこと、土壌有機物の蓄積にともない団粒構造が形成されることにより、孔隙に富んだ土壌となる。

火山灰の影響は、土壌の成熟とともに小さくなる。インドネシアの火山帯では、概ね標高1000 m以下では非火山灰土壌となる。これは低標高帯の高温条件下で、不安定な鉱物であるアロフェン等が風化し、より安定な鉱物が生成するためと考えられるが、火山灰土壌とは分類されなくとも活性Al・Fe量は同国の他地域の土壌に比べ多い。また火山灰の影響は広域にわたり、日本においては多くの土壌が火山灰の影響を多少なりとも受けていると考えられる。これら非火山灰土壌においても、活性Al・Feは有機物蓄積やリン酸の吸着に強く影響を与えており、火山帯の土壌において火山灰の影響を想定することはより精緻な物質循環の理解につながると考えられる。


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