| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


企画集会 T05-6 (Lecture in Symposium/Workshop)

情報化社会におけるヒトの集団意思決定:集合知?それとも、集合愚?

豊川航(北大・社会心理学)

「これが終わったら、どこへ飲みに行こうかな?」

この喫緊の問題に対処すべく、ヒトはインターネットへアクセスし、「口コミサイト」等のwebサービスを利用する。インターネットの発達による情報共有の円滑化は、個人レベルの意思決定へ無視できない影響を与えている。

社会心理学の実験において、ヒトは多数の他者の行動を模倣する傾向を持つことが示されてきた。この個人の意思決定における同調傾向は、人気が人気を呼ぶという正のフィードバックを生み出し、流行やバブルなどのマクロ経済現象パターンの基礎となっている。

このような、人間社会でしばしばみられる同調が生み出す集団動態は、フェロモンなどの信号を介して集団採餌を行うアリやミツバチの集団で観察されるものと類似の現象として捉えることができる。しかし、アリやミツバチなどの研究がその巧みな情報共有システムの生み出す集合知効果を明らかにしてきたのに対し、ヒトに関する研究のほとんどは同調が引き起こす「集合愚」の側面にばかり焦点を当ててきたのである。では、ヒトは情報を共有しても集合知効果を発揮できないというのだろうか。

ヒトが集合知を発揮するためには、少なくとも2つの障壁が考えられる。1つ目は利己的な動機である。真社会性昆虫と異なり、ヒトの場合は、探索のフリーライダーや他者を操作する個体が出現しうる。2つ目は個体の不均一性である。ヒトの場合は、個人ごとに行動傾向が大きくばらつく可能性がある。特に、過去の実験で繰り返し報告されてきた探索傾向(i.e., リスク選好性)のパーソナリティは、小さい集団の振る舞いへ大きな影響を与えるだろう。

発表では、以上2つの問いにそれぞれ焦点を当てた実験室実験の結果を報告し、ヒトの集団意思決定とその他の動物集団との連続性や相違点を議論したい。


日本生態学会