| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


企画集会 T06-6 (Lecture in Symposium/Workshop)

都市緑地に多機能性を付与するデザインおよび時空間戦略

加藤禎久(国連大)

多機能的なランドスケープの定義には以下の3つがある。第一に、単一機能の土地利用が空間的に組み合わさって、集合体として多機能性を備えるもの。第二に、異なる機能が同一空間上に存在するが、時間軸で分離されていて、長時間で多機能性を発揮するもの。第三に、異なる機能が同一空間上に存在し、かつ、同一時間で組み合わさったもの。この第三の定義が「真の」多機能性を有していることになる。しかし、現実には、この3種類の多機能性が同時に存在していることも多く、この3つを分けることは非常に困難である。

一般的には、時間的および空間的スケールが増加するほど多機能性も増加するので、多機能性を論じる際には、ある一定の空間的な広さと時間を限定する必要がある。多機能性を提供する際の問題点として、特に、多様な、競合・相反する利用に供する時に、時間・空間・(使用)用途の対立が起こる。この対立を解決する方法としては、①時空間の利用分離、②同一空間の階層分離、③許可制などを含めた利用規制等がある。

本発表では、都市圏で人工的に創出された緑溝(bioswale)、レインガーデン(雨庭)、屋上緑化などのグリーンインフラの環境的機能を例に、このようなグリーンインフラを創出した場合の便益と都市住民の価値観との対立について考える。例えば、雨水浸透・貯留、雨水流出量抑制、流出速度遅延、植栽と組み合わせた蒸発散促進などの雨水管理上の機能に対し、「みどり」が増えたことにより引き寄せられる昆虫などの動物との対立、蚊やその他「害虫」への嫌悪感、枯葉・枝の清掃、植栽の剪定や管理などである。本発表では、先進的なグリーンインフラデザイン事例を通して、このような対立の解決策および、生物多様性の保全や水質浄化などのさらなる多機能性の付与の手法について考察する。


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