| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


企画集会 T10-2 (Lecture in Symposium/Workshop)

サラワクの地域社会がもつ残存林(プラウ)が景観レベルでの樹木の種多様性保全に果たす役割

竹内やよい(国立環境研究所)

ボルネオ島の焼畑農耕民社会では、焼畑耕作地の間にプラウ(現地語で「島」の意)と呼ばれる断片化した森林を残し、林産物を採集するのに利用してきた。地域社会の中でプラウの大規模なかく乱が禁止されているため、その森林は比較的原生状態に近いと考えられる。個々のプラウが原生林と同等の生物多様性を持ち、またそれぞれ異なった種のセットを保持するならば、複数のプラウを保護することが、地域的な生物多様性の維持に有効であろう。本研究では、地域の生物多様性の保全の場としてプラウに注目し、地域の生物多様性の貯蔵地としての役割について明らかにすることを目的とした。

調査対象としたのは、マレーシア、サラワク州の5つの村が持つプラウ10か所である。まず社会的な背景を明らかにするため、村でプラウについての聞き取り調査を行った。また、8か所のプラウに計16個の植生プロットを設置して樹木の種多様性の調査を行った。結果、断片林にもかかわらず全部で550種を超える樹木種が見つかり、保護指定種も多く含んでいた。α多様性は、原生林と同等のレベルであった。また、個々の断片林は特有の種に富んでおり、β多様性は非常も高かった。それぞれが地域の種多様性の増大に貢献していることが明らかになった。これらの結果は、プラウが地域的な生物多様性の貯蔵地となっていることを示唆している。本講演では、地域の人々が享受する生態系サービスや、またその社会的な成立過程についても言及し、プラウの保全の意義について議論したい。


日本生態学会