| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


企画集会 T10-3 (Lecture in Symposium/Workshop)

サラワクの淡水魚多様性とその生息環境

鹿野雄一(九大決断科学)

開発が進むマレーシアサラワク州にて,その淡水魚多様性を明らかにするとともに,アブラヤシやアカシアなどのプランテーションが魚類多様性にどう影響を与えているかを調査した.様々な環境下における113の小河川で定量的・定性的な捕獲調査を行い,112種を確認した.そのうちもっとも多かったのがコイ科で29種,次にハゼ科で10種,ギギ科で9種,オスフロネムス科で6種,などとなった.

プランテーションの影響を定量的に解析した結果,種数,個体数,多様性指数などの指標は,プランテーションにより負の影響を受けていた.種数などはプランテーションで半減していたが,この結果は半島マレーシアで行った別の研究ともほぼ一致した.プランテーションが魚類に影響を与えるメカニズムについてはさらなる詳細な調査が必要だが,土砂流入によるハビタットの平坦化や河畔林不在による水温上昇などが考えられる.また同地域で行われた水質調査から,塩素や全窒素量などの水質パラメータが土地利用に影響を受けるとともに,魚類多様性と関連していた.これらの環境パラメータは複雑に絡み合っており,擬似相関や自己相関を排除して,解析する必要がある.

魚類の種数は「プラウ」と呼ばれる地域住民の水源林で特に高かったが,サンプル数が少なく統計的な判断はできなかった.


日本生態学会