| 要旨トップ | 受賞講演 一覧 | 日本生態学会第62回大会(2014年3月,鹿児島) 講演要旨


日本生態学会奨励賞(鈴木賞)受賞記念講演 2

菌根菌は生態学の救世主となりえるか

門脇 浩明(京都大学大学院人間・環境学研究科)

 森林の遷移機構は、多くの要因が絡み合う複雑性ゆえに、未だ明確な説明がなされていない。中でも、樹木の生育や個体群動態を決定しうる有力な候補要因である土壌微生物、殊に菌根菌の役割を実証する必要性は高い。そこで、私は、メソコズム実験を通じ、森林を構成する樹木とそれらをとりまく菌根菌の相互作用がどのように働き、今ある森林の構造を形成しているのかを明らかにした。

 実験デザインとして、温帯林において優占する二種類の菌根タイプ、外生菌根菌(EcM)とアーバスキュラー菌根菌(AM)、に注目した。はじめに、土壌を充填したメソコズムを36基設置し、そこに、それぞれの菌根菌タイプを根に有する菌根親樹処理区を設置した。これらの親木群集とその菌根菌が安定化するであろう三か月後、菌根菌に未だ感染していない実生をEcM性とAM性樹種のそれぞれについて準備し、菌根親木処理区と交差するように割り振り、親木の直下に移植を行った。十分な成長変化がみられるであろう二度の生育期を経た一年半後、それらの実生全てを収穫した。実生の生存率・成長率・葉の元素組成・根圏微生物の次世代シーケンスの解析データをもとに、親樹から実生への菌根菌の継承様式を明らかにしたうえで親樹-実生間の相互作用を定量化した。本講演では、その結果を報告し、菌根菌が森林群集の構造と動態を決めるうえで重要な役割を果たすことを示す。

日本生態学会