| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(口頭発表) D2-04 (Oral presentation)

リーフモンキーは種子散布者として機能しているか?

Yamato Tsuji*, Jenni Indah, Kanthi Arum Widayati, Bambang Suryobroto

コロブス類は「リーフモンキー」とも呼ばれるように、葉食専門の霊長類だと考えらえてきた。しかし近年、多くのコロブス類で果実食が観察され、ゆえにコロブス類はマカク類・グエノン類・類人猿と同様、熱帯林の有効な種子散布者として機能している可能性がある。この点を検証するため、2011-2013年にインドネシア・ジャワ島のパガンダラン自然保護区ならびにジャカルタのラグナン動物園でジャワルトン(Trachypithecus auratus)を対象に調査/実験を行い、1)糞分析、2)野生のルトンの土地利用パターンと、動物園で行った給餌実験の結果を組み合わせた散布距離の推定、3) 排泄場所のマイクロハビタットの調査、4)発芽実験を実施した。一年間に集めた240個の糞からは7種の植物の種子が出現した。とくにイチジク類(Ficus spp.)が多く含まれていた。ルトンが果実と共に飲み込んだ種子は、24-96時間後に排泄され(平均47時間)、この時間に野生個体が移動した距離は1-299mだった。以上の結果から種子の散布距離を推定したところ、49%の種子が100m以内、92%の種子が200m以内の場所に散布されていた。排泄場所は採食場所に比べて開空度が低く木の生育密度が高いという特徴があった。最後に、ルトンに飲み込まれた種子の発芽率はコントロールと比べて低く、マカク類に飲み込まれた種子の発芽率とは違いがなかった。1)散布する植物の多様性の低さ、2)散布距離の短さ、3)散布場所の開空度の低さ、4) 飲み込まれた種子の発芽率の低さという特徴から、個々の種子に対するルトンの相対的な有効性は低いと考えられたが、森林バイオマスにしめる割合の大きさを考慮すると、ルトンは森林生態系の中で一定の役割を果たしていると考えられる。


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