| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(口頭発表) F1-12 (Oral presentation)

群集集合: 空間的および時間的ニッチ分化の重要性

*平賀優大, 岩崎藍子, 大平昌史, 金森由妃, 胡之陽, 立花道草 (北大・院・環境), 奥田武弘 (水研セ・国際水研), 深谷肇一 (統数研), 野田隆史 (北大・地球環境)

新たなハビタットパッチが形成されると、徐々に生物が住みつき、やがて群集が形成される。この過程を群集集合という。遷移に伴う群集集合は8つのタイプに大別できる:(1)中立群集(2)種選別(3)種選別‐加入制限(4)種選別‐マス効果(5)生活史トレードオフ(5)生活史トレードオフ+種選別(6)生活史トレードオフ+遷移初期に種選別(7)生活史トレードオフ+遷移後期に種選別 このタイプのうちどれが該当するかについて実際の群集で検証された例はない。そこで岩礁潮間帯の固着生物群集を対象に、群集集合が上記のどのタイプに属するかを、(ⅰ)α多様性の時間的傾向(ⅱ)局所群集構造の時間的入れ子性 (ⅲ)β多様性の時間的傾向(ⅳ)β多様性の説明要因としての環境要因と空間要因の重要性の時間変化パターンの4つの基準をもとに、検証した。

北海道南部に同サイズの人工裸地を21個作成し、12年間にわたり、固着生物各種の被度を測定した。得られたデータから前述の(ⅰ)(ⅱ)(ⅲ)(ⅳ)のパターンを求めた。

その結果、8つの群集集合のタイプのうちの「種選別‐マス効果」に合致した。このことは、岩礁潮間帯の攪乱パッチでの遷移における群集集合では、従来の遷移研究で重要視されてきた「生活史トレードオフ」や岩礁潮間帯の群集でしばしば強調される「加入制限」といったメカニズムはあまり重要ではなく、むしろ種選別とマス効果が重要であることを強く示唆している。


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