| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(口頭発表) G1-01 (Oral presentation)

河川中の濁りの変化がアユの行動に及ぼす影響に関する検証

*宮川幸雄(土木研究所),末吉正尚(土木研究所),小野田幸生(土木研究所),堀田大貴(土木研究所),萱場祐一(土木研究所)

近年、河川における土砂輸送の連続性の確保や治水安全度の向上などを目的とした人為的な土砂供給が検討されており、その際に生じる濁りが河川生物におよぼす影響の予測・評価が求められている。特に、濁りに対する魚類の忌避行動は低濃度で誘発されるため、その区間から消失する可能性もある。ただし、濁りの濃度と忌避行動については野外での検証事例が少なく、室内実験の知見を野外に適用している状況にある。そこで、本研究では、野外の実験施設で人為的に濁りを発生させ、異なる濁りに対するアユの行動を追跡した。

実験区間を縦断方向に3分割し、それぞれの両端に濁度計とICタグのアンテナを設置した後、ICタグを装着したアユを放流した。これにより、濁りの縦断方向の勾配を利用し、異なる濁りに対するアユの行動を検出できるようにした。また、濁りについては、濁度計による連続観測値と採水試料から、SS濃度に換算した。濁りは24時間にわたって発生させ、アユがアンテナを通過した時刻とそのときのSS濃度を求めた。そして、アユの行動に対する濁りの影響を調べるため、上流および下流への移動が生じた際の各SS濃度の頻度分布を比較した。

移動が生じたSS濃度の頻度分布を比較した結果、上流と下流への移動でピークが異なり、一定範囲内ではより高濃度で下流への移動が高い頻度で生じることが示された。また、実験中のSS濃度は0~350mg/Lを示したが、移動は上下流とも約0~60mg/Lで主に生じており、濁度が高くなるほど忌避行動が誘発されるわけではないことも示唆された。


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