| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(口頭発表) G2-23 (Oral presentation)

更新世の日本海隔離で生じたアゴハゼ2グループの交雑帯のRAD-seq解析

平瀬祥太朗(東大・水実),手塚あゆみ (龍谷大・農),永野惇(龍谷大・農,JSTさきがけ,京大・生態研),岩崎渉(東大院・理)

異所的に進化した集団が接触して生じる交雑帯(Hybrid zone)は、種分化へとつながる進化的現象を捉えるための格好の機会を与える。日本列島沿岸に生息するアゴハゼには、更新世の日本海の隔離で生じた2つの遺伝的グループ(太平洋グループと日本海グループ)が存在し、分布境界にあたる岩手県田老周辺で交雑帯が形成されている。しかし、交雑帯を介したグループ間の遺伝子浸透はあまり進行しておらず、また、F2以降の交雑個体のみで構成された集団が田老に存在することが8座のマイクロサテライトDNAとミトコンドリアDNAによる解析で示唆されている。本研究では、太平洋グループの2集団と日本海グループの2集団、田老周辺の6集団の計209個体のRAD-seqを行い、交雑帯の集団構造ならびに田老の交雑集団のゲノム構成をゲノムワイド多型情報に基づいて調査した。多個体で共有された682 SNP座を用いてクラスタリング解析を行った結果、田老の交雑個体が約50%の混合比で各グループ由来のゲノムを有していることが示唆された。また、クラスター数を3と仮定した場合、田老の交雑集団は第3のクラスターに帰属され、このクラスターから各グループへの一方向的な遺伝子流動が検出された。田老の交雑集団に2グループのゲノムがランダムに浸透しているかどうかを調べたところ、多くのSNP座でランダムではない浸透が検出された。RAD-seq解析の結果は、2グループの交雑によって新たなゲノム構成を有するグループが生まれ、その規模を拡大させている可能性を示している。


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