| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(口頭発表) G3-35 (Oral presentation)

DNAバーコーディングによるBalanophoraの宿主探索と2種の新種記載

九大・理・生物

近年、DNAバーコーディングは生物の同定を可能にする技術として広く使われるようになってきた。本講演では、植物のDNAバーコーディング領域を利用した寄生植物の宿主探索、および新種記載での種の識別における有効性を示した2つの事例について紹介する。

Balanophoraは他種の根にする寄生植物でこれまで、35科75種に寄生することが報告されており、宿主特異性はないと考えられている。しかし、地中に長く伸びる根に寄生する為、正確に宿主を特定していたとは言い難い。そこで、実際に寄生している根からDNAを抽出しDNAバーコーディングによる種同定を行った。結果、異なる5つの科に寄生していることが分かった。また、それらの多くはこれまでに記録のない科であった。今回の研究を通して、Balanophoraには宿主特異性はないことが確認できた。

熱帯林は世界の樹木の多様性の90%を含んでいる。そのような地域で植生調査を行うと、短期間に多くの植物種をサンプリングすることができ、新種を発見することもできる。しかしながら、形態に基づく種同定・新種記載には多くの時間が必要とされ、多様性評価のボトルネックとなっている。また、熱帯林で研究を行う分類学者の減少が、この状況に拍車をかけている。このような状況下で、DNAバーコーディングは分類学的発見の手助けとなる。Eustigmaはマンサク科に含まれ、小さな花弁と大きく引き伸ばされた雌蕊を特徴として持つ、3種しか知られていない小さな属である。DNAバーコーディングにより、花のない標本から属を特定し、その他の特徴から記載した事例を紹介する。EuphorbiaEuphorbia亜属は、Euphorbia属の中で最も多型的なグループで種数も多い。DNAバーコーディング領域、およびtrnKndhF、ITS領域を用いた系統解析から新節、新種記載を行った事例について紹介する。


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