| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(口頭発表) H1-06 (Oral presentation)

小笠原諸島の外来性グリーンアノールにおける集団間形態差とその生態学的要因の検討

*安西航(東大・理), 高橋洋生, 戸田光彦(自然研), 遠藤秀紀(東大・博物館)

小笠原諸島には北米原産の外来種グリーンアノールが侵入し、父島と母島では島の全域に定着している。小笠原における最初の移入地である父島から母島に拡散したのは約30年前と考えられているが、これまでの我々の研究から、両集団間には既に形態差が生じていること、またその傾向が雌雄で異なることがわかってきた。そこで、短期間でこの集団間形態差を導いた生態学的要因を検討するため、オス間闘争行動と生息環境利用を2島間で比較した。

闘争行動を観察するため、野外で採集したオス2個体をケージに入れ、闘争の勝敗を記録した。闘争の勝敗にどのような要因が影響するか検討するため、闘争の勝敗を応答変数に、個体の頭胴長、頭長、頭高、頭幅、咽頭垂長、四肢筋重量を説明変数として統計モデルを構築した。その結果、父島では頭幅を説明変数としたモデルが、母島ではSVLと頭長と咽頭垂長を説明変数としたモデルがそれぞれ最適なモデルとして選択された。すなわち、父島と母島の集団ではオス闘争の結果に寄与する形態形質が異なっていることが示された。さらにこれらの形質の島間変異は、父島と母島の野外集団でオス特異的にみられる形態的特徴の島間変異とそれぞれ対応していた。

また野外でアノールが利用する生息環境を比較した結果、父島では樹幹で、母島では枝や葉で観察される頻度が高かった。別途行った解剖学的分析では、父島集団では上腕後引筋が、母島集団では前腕内転筋が発達しているとことが確かめられていたが、それぞれの形態的特徴はよく利用する微小環境での姿勢や運動様式に適応的であると考えられる。以上より、父島と母島のグリーンアノールにみられる集団間の形態差は、オス闘争の様式の違い及び微小環境の違いによる影響を強く受けていることが示唆された。


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