| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(口頭発表) H1-10 (Oral presentation)

周期ゼミ(素数ゼミ)の周期性進化メカニズムの解明

*伊東啓(静岡大・創造), 柿嶋聡(静岡大・創造), 上原隆司(名古屋短大), 守田智(静岡大・工), 小山卓也(京都大・理), 曽田貞滋(京都大・理), John R. Cooley(コネティカット大), 吉村仁(静岡大・創造)

周期ゼミ(素数ゼミとも呼ばれる)は13年または17年の素数周期で大発生する北米に生息する昆虫の蝉であり、昆虫の中でも長い生活史を持つ。なぜこのような蝉が誕生したのかは大きな謎であり、これまでにいくつかの進化仮説が提唱された。その一つに、氷河期への環境適応説がある。セミのような植物に寄生する昆虫の成長速度は、寄生先の植物の成長速度に依存するとされる。植物の成長は有効積算温度による「気温依存の成長」であるため、セミの幼虫も気温によって成熟する。氷河期下では成長速度の低下により、幼虫期が長期化し、成虫の個体数が減少することで、交尾機会が減少してしまうと考えられる。そこで、少ない個体数でも羽化を同調させることで交尾機会を維持するために成長速度に合わせた様々な周期性を獲得したという仮説である。つまり第一段階目の進化「様々な周期性の進化(10~20年)」の後に、「交雑回避のための素数周期の進化(13,17年)」という二段階の進化が起こったと考えられる。

そこで我々は、個体ベースのシミュレーションモデルを構築し、氷河期(平均気温の低下)という環境下でセミの周期性が進化する様子を再現することに成功した。これにより、氷河期による成長スピードの低下という危機的状況が周期性進化に大きく関係していることが示唆された。ここでは周期性進化の再現の概略を説明し、議論を展開していく。


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