| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(口頭発表) H1-12 (Oral presentation)

個体群分岐の原理

大森浩二 (愛媛大学・沿岸)

Darwinの「種の起源」では、種分化は選択による生態学的種分化によるものであると考えられていたが、Mayr (1963) 以来、地理的隔離による異所的種分化が主な種分化のプロセスであるとされてきた。20世紀末に行われた幾つかの理論的解析により、生態学的種分化も種分化を成立させるうえで十分可能なものであると示されてから、ここ十数年で生態学的種分化に関する数多くの理論的貢献がなされてきた。そのなかで生態学的種分化は起こりうるがその確率は比較的低いとの認識が広がっている。ただ、Gavrilets (2014) のいうように、そろそろ純粋な理論解析から、実際の種分化過程と対応した理論の検討が必要とされる時期にきている。そのためには、多くの理論で前提とされている分岐する個体群間の個体群サイズや適応度の対称性、また、形態の大きすぎる変異性や高すぎる遺伝的変異率を仮定しない場合の解析が必要とされている。本講演では、単一個体群が2つの独立した(異なった個体群サイズや適応度をもつ)個体群へと分岐する集団遺伝学的モデルの上記したパラメータの非対称性を考慮した分岐条件を解析し、野外における種分化への適用を試みた。

周囲を海で囲まれた日本列島では特に多いが、水域生物の中で、両側回遊性という海(幼生・幼体期)と河川(若齢~成体期)を行き来する生活史を持つ生物が幾つかの分類群(軟体動物類・甲殻類・魚類)で知られている。この両側回遊性の種から河川陸封の種が生態学的プロセスを経て分化した(または逆方向の分化の)可能性が、系統遺伝学的研究を含めこれまで多く示されてきている。本講演では、この種分化過程に対する、生態学的種分化モデルの適用の試みについて報告する。


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