| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(口頭発表) H2-15 (Oral presentation)

餌サイズと繁殖干渉を淘汰圧としたヒメオサムシの体サイズ分化

*奥崎穣(北大・FSC),曽田貞滋(京大・理)

体サイズの地理的変異は動物分類群において広く見られる現象である.体サイズは生活史を通して様々な生態的機能に関わるため,体サイズの適応分化を実証するには,複数の多様化淘汰に対する体サイズ変異のパフォーマンスを評価し,主要な淘汰圧を特定しなければならない.オオオサムシ亜属は日本列島内で体サイズの多様化を遂げた昆虫であり,その体サイズは気温と正の相関(逆ベルクマン則)を示す.さらに,その小型種ヒメオサムシは大型の近縁種オオオサムシが分布しない異所的地域の一部で大型化している(形質解放).本研究では,オオオサムシ亜属の体サイズ進化要因を明らかにするため,ヒメオサムシの体サイズと季節性,多産性の関係,そして体サイズ変異が捕食と繁殖干渉に与える影響を調査した.幼虫期(発育期間)は高標高の集団で短く,寒冷な環境への適応が逆ベルクマン則の原因と考えられる.ヒメオサムシが大型化している地域では,幼虫期に餌のミミズが大きく,大きい幼虫ほど大きいミミズの捕食成功率が高かった.同地域のメスは卵巣小管数を犠牲にすることなく,大きい卵(1齢幼虫)を産卵した.また成虫の体サイズの増加は,オオオサムシとの繁殖干渉によるコスト(異種への交尾と授精)を増加させた.ヒメオサムシの体サイズの形質解放は,同所的地域での近縁種との繁殖干渉と異所的地域での大きい餌サイズによって生じていることが実証された.


日本生態学会