| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(口頭発表) H2-18 (Oral presentation)

グリホサート抵抗性ヒユ属外来雑草の侵入

*下野綾子(東邦大・理), 浅井元朗(農研機構・東北)

近年アメリカ 合衆国(USA)では、除草剤の1つグリホサート剤使用量の増大に伴い、抵抗性雑草の進化が深刻な問題となっている。中でもグリホサート抵抗性のヒユ科ヒユ属オオホナガアオゲイトウは、2005年に報告されて以降急速に蔓延した種である。雑草種子の主要な侵入ルートとして、海外からの輸入穀物への混入による非意図的輸入がある。これまでにも海外から日本に輸入される穀物には、多くの雑草種子が混入しており、その中には除草剤抵抗性個体も含まれていることが報告されている。USAは日本の主要な穀物輸入相手国であり、グリホサート耐性オオホナガアオゲイトウは輸入穀物への混入を通じて日本に移入している可能性が高い。さらに本種は近縁種と種間交雑をすることから、日本の港湾・市街地・畑地いたる所ですでに繁茂しているヒユ属雑草との交雑を介して、除草剤抵抗性遺伝子が拡散する可能性が考えられる。本研究ではオオホナガアオゲイトウの除草剤抵抗性形質の拡散可能性を評価することを目的とし、日本の主要な穀物輸入港においてグリホサート抵抗性個体の定着状況を明らかにするとともに、同所的に生育しているヒユ属雑草の葉緑体DNAの塩基配列および核のマイクロサテライト領域の多型性を解析し、種間交雑の可能性を検討した。主要港湾8港を調査した結果、3港においてオオホナガアオゲイトウの生育が確認され、そのうち2港においてグリホサート耐性個体が検出された。そのうちの1つ鹿島港はオオホナガアオゲイトウが蔓延している区画があり、抵抗性個体の頻度は13-16%であった。もう1つの博多港における生育個体数は2個体であったが、両方とも抵抗性個体であった。さらに博多港では葉緑体DNAはホソアオゲイトウ型、マイクロサテライトはオオホナガアオゲイトウ型という個体が検出された。


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