| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(口頭発表) H2-21 (Oral presentation)

那珂川水系における特定外来生物カワヒバリガイの初記録:現状と対策

伊藤健二(農環研・生物多様性)

近年、利根川水系に属する霞ヶ浦(茨城県)では、特定外来生物カワヒバリガイの分布拡大と密度増加が報告されている。利根川水系に隣接する那珂川水系は一部地域で霞ヶ浦からの取水が行われているが、カワヒバリガイの生息は2014年5月まで確認されていなかった。しかし2014年11月、霞ヶ浦から取水している同系内の貯水池(笠間池)でカワヒバリガイの生息が確認された。本種の那珂川水系への侵入がどの程度進行しているのかを把握するために、笠間池を中心とした生息状況調査を行った。

調査の結果、笠間池では湖岸の約半分の地点からカワヒバリガイが採集され、もっとも密度が高かった場所は10分間の調査で124個体のカワヒバリガイが採集された。採集個体のサイズと過去に報告された成長データから、本種は遅くとも2013年には侵入していたと推察された。笠間池から周囲に水が流出する水路の1地点と、笠間池から取水する貯水池1地点からカワヒバリガイが採集されたが、いずれも密度は低く、河川で行った調査では確認されなかった。今回の結果は、那珂川水系へのカワヒバリガイの侵入はまだ初期の段階にあることを示しており、分布拡大や被害の発生を防ぐには新たな生息地への侵入を検出すること、侵入した集団については根絶を目的とする対策の実施が望ましいと考えられた。特に、カワヒバリガイが生息する水域から取水している水利施設とその周辺は、侵入のリスクも高く重点的な対策が必要となるだろう。


日本生態学会