| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(口頭発表) H3-25 (Oral presentation)

シオジ人工林における26年間の開花周期

崎尾均(新潟大・農)

樹木の開花・結実には豊凶の周期のあることが知られている。雌雄異株樹木に関しても豊凶の周期があり、これまでの研究で雌雄の開花が同調することが指摘されている。しかし、長期的かつ量的な研究データはそれほど多くない。本研究では、冷温帯の渓畔林優占種である雌雄異株樹木のシオジを対象に、1)開花量に年変動(豊凶)はみられるか? 2)開花量は雌雄間で同調するか? 3)開花周期に長期的な変動が見られるか?また、雌雄間で異なるか?について調査を行った。埼玉県秩父市東京大学演習林のシオジ人工林に調査プロットを設置し、1990年から2015年まで26年間にわたりシオジの雌雄個体の開花量を調査した。開花量は全く開花なしのレベル1から大量開花のレベル5の5段階に分けて、双眼鏡による目視で開花量を把握した。雌雄の性比は1:1で調査の開始、終了時点で変化はなかった。平均DBH(胸高直径)は繁殖個体と未成熟個体には差が見られたが、雌雄間では差が見られなかった。シオジの開花には3から4年を周期とする明らかな年変動が見られるとともに、雌雄個体ともに年変動に明らかな個体差が見られた。26年間の平均開花量には雌雄間で差は見られなかったが、開花量の変動は雌個体の方が大きい傾向にあった。雌雄個体の開花は調査期間をとおして同調する傾向にあったが、26年間の長期の間に開花パターンは、2000年前後を境として大きな変動が見られた。また、この変動は雌雄間で同調していた。この長期の変動パターンは、高樹齢のシオジの天然林でも見られることから、その原因は気候変動などの外因的なものと推定される。


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