| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(口頭発表) H3-32 (Oral presentation)

島嶼の生物・文化的景観

*中越 信和(広大院国際協力),洪 善基(韓国・国立木浦大)

地理学では豪州大陸とグリーンランド島の間に大陸と島の境界が引かれている。一方、本州も島だが、全島が類似の文化や生物多様性ではない。演者らは気候区分や大きな島や半島と恣意的に区別される瀬戸内海の島嶼と韓国多海海の島嶼を対象として、景観生態学的比較研究を行うことにした。両島嶼も長年人為的撹乱を受け、その景観は文化的景観となっている。さらに本講演ではBiocultural landscape 生物文化的景観を、生物多様性、文化的多様性、及び出色の特徴(例えば宮島は島全体が聖地となっている)の3つの構成要素から生ずる景観と捉える(Hong et al. 2014)。従来の文化的景観研究では、類似の土地利用型を同一視して分析を行ってきた(例えばNakagoshi & Hong 2001, Hong et al. 2011)。しかし、多島海の島々の景観分析の過程において従来の景観類型を同一化する手法では各島の固有性が失われることが判明した。また、社会経済性から瀬戸内海の全有人島の文化的景観の変化の方向性を6群に分類したが(Ohta & Nakagoshi 2006)、その際本四架橋という重要な経済インフラ要因を間接的に扱っていた。こちらでも、架橋のルート形状(直線の淡路島、ジグザグ状のしまなみ海道の島嶼)や架橋されていない島(広島県大崎上島)での社会的対応の違いのため、全ての島で論文において予測した景観変化となっているわけではなかった。このようにミクロなレベルの差異による景観構造への影響や、生物多様性に影響を及ぼす島嶼の地因子(面積、最高峰の高さ、基盤岩の種類など)を考慮すると、島嶼間の分析では出色な特徴を加えて、実態に合ったアプローチが必要であると考えた。それが、「生物文化的景観」による解析方法である。当然だが、枚挙を余儀なくされる本研究は途上にある。


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