| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(口頭発表) I2-14 (Oral presentation)

沖縄からの新しい社会連携型環境モニタリングプロジェクト、「OKEON 美ら森プロジェクト」の始動

*吉村正志, 芳田琢磨, 小笠原昌子, Evan Economo(OIST)

琉球列島は、小笠原諸島と並んで日本の生物多様性保全上最重要地域のひとつである。その一方で、琉球列島の中で最大面積を有する沖縄本島は、110万人以上の人口を抱え、県庁所在地の那覇市の人口密度は神奈川県横浜市に匹敵する。北部やんばる地域における森林地域の生物相の回復と並行して、中南部の都市圏における生物相の保全と持続的発展との両立は大きな課題である。しかし、その基礎資料となる島全体を網羅した生物相の情報と、その記録を担保する標本の蓄積は未だ限られたものにとどまっており、十分とはいえない。

そこで筆者らは、「OKEON 美ら森プロジェクト」と名づけた、沖縄本島全域を網羅した環境モニタリングネットワークの構築を始動した。採集される標本収蔵や遺伝子解析システム、そして地理情報システムの整備を2014年度に行い、2015年度からは野外調査システムと、その採集試料の処理システムの整備に取り組んでいる。全島24箇所を目標に半径100mの円形調査区を設定し、飛翔性昆虫用トラップを各調査区3基ずつ設置、年間を通じて2週間毎にそれを回収する。2016年2月の段階で20調査区が順次稼働しており、すでに採集イベント数は500に達する。ソーティングシステムも同時進行で稼働を開始しており、採集試料のうち、ほぼ90% は 目レベルまでのソートを完了した。

本プロジェクトでは、野外調査システムやそこからのデータを利活用した、社会ネットワーク構築も大きな目標のひとつとしている。その一環として、現在、地元高校との科学研究実践活動を通じた高大連携や、地元博物館との環境教育面での協力関係構築を進めている。


日本生態学会