| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(口頭発表) J1-01 (Oral presentation)

北海道東部火山性噴気孔周辺の土壌環境と植物の分布

*南佳典(玉川大・農), 野口侑璃奈(玉川大・農)

火山活動は自然攪乱の主要なものの一つであり,火山活動が植物群集へもたらす影響については多くの研究が行なわれている.火山活動のうち噴火は一時的ではあるが甚大な影響を及ぼすが,それに対し噴気活動が絶えず続いている場所では火山ガスの噴出が恒常的に植生に影響している.本研究では,北海道東部弟子屈町に位置する2箇所の火山噴気孔群を調査地とし,火山ガスおよびその蓄積物が植生に対してどのような影響を及ぼしているかを,土壌環境を中心に検討した.

噴気孔は集中的に分布し,硫化水素ガス濃度は2-20 ppm程度であったが,場所によっては72 ppmを示した.噴気孔群周辺の土壌は,含有成分の違いで黄色,灰色,白色,赤色および茶色を呈し,硫酸イオン濃度は灰色土壌,白色土壌および黄色土壌で高く,赤色土壌および茶色土壌では低かった.アルミニウムイオン濃度は灰色土壌および白色土壌で高く,黄色土壌,赤色土壌および茶色土壌で低くなった.噴気孔群から離れるに従い,草本群落,林縁,森林と植生が変化し,出現する種数は増加した.また,林縁部よりも林内の方が広葉樹実生は多く出現した.下層植生は組成によっていくつかのグループに分類され,大まかに林内と,林縁部および草本群落で異なる組成を持つグループに分けることができた.

今回の研究では,小規模噴気孔群から噴出する硫化水素ガスによる植生への影響はほとんどないと考えられるが,硫化水素ガスが土壌中の水分に溶解し硫酸イオンとなることでアルミニウムイオンの濃度が増加し,植物の生育を阻害していると推察できる.今後は,土壌中の他の成分や土壌温度などにも着目し,植生タイプを決定する要因を検討する必要がある.


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