| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(口頭発表) J1-02 (Oral presentation)

火山性ガスが高山植生に及ぼす影響 ー立山での事例ー

*和田直也,佐澤和人(富大・極東),吉松美咲,樋口開渡,松田大地(富大・理),川村健介(広島大・国際)

北アルプス立山の弥陀ヶ原台地上部に位置する地獄谷では、2011年に発生した東日本大震災以後、火山性ガスの噴気量が増加し、ガスの拡散に伴う人間や生態系への影響が懸念されている。火山性ガスに含まれる二酸化硫黄や塩化水素等は、周辺の植生に拡散し、その葉群に付着することで、葉の赤褐色化や個体の枯死を引き起こすことが知られている。本研究では、無人航空機(UAV)を利用した噴気孔周辺植生のモニタリングを実施し、高山植生が受ける火山性ガスの影響を評価した。UAVを用いた空撮は、2013年から2015年にかけて、植生面積がほぼ最大となる8月に実施した。さらに、2014年と2015年においては、5月〜7月にかけての残雪期においても空撮を実施した。デジタルカメラ(Canon S100)を搭載したUAV(情報科学テクノシステム社製Grass Hopper)を使用し、噴気孔の北、東、南側の区域を主な対象に撮影を行った。SfMソフト(Agisoft社製PhotoScan)を用いてモザイク画像を作成後,噴気活動が活発になる前の2009年に国交省が実施したレーザー測量画像データを参照してオルソ幾何補正を行った。解像度0.5m四方のピクセル毎に植生指数(Green Excess Index:GEI)を算出し、植生域の面積を地図化した。

その結果、北側及び東側の植生減少率は震災前に比べ約50%以上に達しており,植生の衰退は群落の縁部から進行している傾向が検出された。一方、南側植生域の減少率は約3%であった。植生の衰退は、消雪が早い時期に起こる稜線部で顕著であり、ハイマツ群落や風衝地群落が大きな影響を受けていたが、消雪の遅い雪田群落では影響が少なかった。


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