| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(口頭発表) J1-05 (Oral presentation)

分布北限域におけるイラモミ林の種組成と分布

星直斗(栃木県博)

イラモミPicea alcoquianaはマツ科トウヒ属の針葉樹であり,本州中部山岳地域と栃木県北部とに隔離分布する.分布北限域となる栃木県北部にあり,イラモミの個体数が多いのが高原山(1795m)である.高原山にはイラモミ林も多く見られ,ほぼ純林となることもある.しかし,その種組成や分布についての報告はほとんどない.本研究はイラモミ林の種組成と生育環境との対応関係について明らかにすることを目的とした.

Braun-Blanquet法を用い,イラモミ林およびその隣接群落であるブナ林,ミズナラ林,ウラジロモミ林,ダケカンバ林,コメツガ林の植生調査を行った.標高,斜面方位と傾斜,林内の礫の分布状況などもあわせて記録した.調査は2011年8月から2015年10月に行った.

31カ所の植生調査資料から素表を作成,表操作を行った結果,資料を種組成的にまとまりのある3つのグループに類型化した.3つとは①クマシデ,ツルアジサイ,ブナなどで区分され,分布標高が1110~1450mのクマシデ下位単位,②コメツガ,オオバミネカエデで区分され,分布標高が1440~1740mのコメツガ下位単位,③区分種を持たず,分布標高が1435~1660mの典型下位単位である.なお,24カ所の資料でイラモミが出現した.

①にはイラモミ林以外にブナ林,ミズナラ林,ウラジロモミ林などが含まれ,種組成は互いによく似ていた.イラモミ林は急斜面に多く見られる傾向があった.②にはイラモミ林以外にダケカンバ林,コメツガ林が含まれ,種組成は互いによく似ていた.イラモミとコメツガは混交することが多く,礫の露出が大きいほど,コメツガが林冠に優占する傾向があった.③は全てほぼ純林に近いイラモミ林だった.高木層の樹高,胸高直径はほぼ同じで,亜高木層があまり発達していなかった.斜面傾斜や礫の露出の程度は様々であり,立地との対応関係は見られなかった.


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