| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(口頭発表) J1-10 (Oral presentation)

山火事跡地の種子発芽個体

*津田智,増井太樹 岐阜大流域圏センター

2014年は比較的大規模な山火事が全国で相次いで発生した.群馬県桐生市(約400ha焼失),岩手県盛岡市(約200ha焼失),大分県別府市(約100ha焼失)などは大きな被害をもたらした.これらのうち,森林群落が樹冠火を受けて林冠木がまとまって焼死した盛岡市渋民地区(4月27日焼失)と兵庫県赤穂市木津地区(4月27日,約70ha焼失)で焼失直後の夏に植生の調査を実施した.

盛岡のアカマツ林焼失地で種子繁殖個体の密度が高かったのは,ヤマハギ,ヌルデ,タラノキ,タケニグサなどで,種子繁殖個体密度の合計は56.88m-2だった.一方,栄養繁殖個体はチヂミザサ,スゲ属の一種,クマイザサ,ヒメノガリヤスなどで,合計32.88m-2だった.

赤穂のアカマツ林焼失地では,種子繁殖個体密度が高かったのが,ヨウシュヤマゴボウ,ヌルデ,ダンドボロギク,リョウブなどで,合計密度は1.11m-2だった.栄養繁殖個体では,ヒサカキ,ソヨゴ,アリノトウグサ,サルトリイバラ,ガンピなどで,合計密度は8.38m-2だった.

栄養繁殖種で両火事跡に共通に出現した種はほとんど無かったが,種子繁殖ではヌルデ,タケニグサ,ヤマグワ,ヨウシュヤマゴボウ,ダンドボロギクが共通に出現した.

今回は兵庫と岩手の2ヶ所の火事跡での比較だが,個体密度が大きく異なっているにも関わらず,種子繁殖には共通種が多いことが明らかになった.

過去に調査をおこなった岐阜県岐阜市(約400ha焼失),岩手県釜石市(約400ha焼失),岡山県玉野市(約370ha焼失),茨城県日立市(約170ha焼失)などを含む全国各地の山火事跡地植生でも,種子繁殖に共通性が高いことが明らかになっており,また,種子繁殖個体の密度は東北日本で高く,西日本で低い傾向が認められている.


日本生態学会