| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(口頭発表) J2-23 (Oral presentation)

報告件数から考えるマラリアの数理モデル

*布野孝明(九大・理・生物),岩見真吾(九大・理・生物,さきがけ,INSERM)

マラリアは原因となる原虫を蚊が媒介することによって拡散する感染症であり、その流行を記述するにあたってはヒト集団の動態と蚊集団の動態との両方を考える必要があるため、他の感染症と比較して複雑である。また、ヒトはマラリア感染後で症状が見られなくなった状態においてもガメトサイトと呼ばれる生殖母体が体内に存在する限り新たな蚊に対しての感染性を保持し続ける。つまり、感染者が発症期間中に病院等で受診しなかった場合、以後マラリア感染者の一人として記録される可能性は低くなる。このように、疫学調査によって得られる"マラリア感染者報告数"は実際の感染者数のうちの一部でしかない。しかし、現実的にはこのようなデータから流行に関する解析を行わざるを得ない。

本研究では古典的なマラリア感染のモデルであるRossモデルを、データ解析に焦点を当てて改良したモデルを用いて、南アフリカにおけるマラリア感染者報告件数のデータを解析してゆく。また、次世代行列理論を用いて本モデルにおける基本再生産数を導出する事ができた。さらに、流行初期の伝播動態を定量化するために必要となる、マルサス係数と基本再生産数の関係性の定式化にも成功した。


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