| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(口頭発表) J3-33 (Oral presentation)

温暖化とアメリカシロヒトリの化性変化

*都野展子/金沢大学

アメリカシロヒトリ Hyphantria cunea Drury (鱗翅目 ヒトリガ科)は北米原産外来種で, 1945年に東京で発見され, 関東を中心に急速に拡がり1950年代には北陸, 中部, 関西にまで分布を拡大, 石川県では1954年に発生が確認されている(中田1995). 本種は侵入当初2化性であったが, 1970年代後半から北緯36度以南では3化性に増加したことが報告されている(五味1992). 

石川県金沢市の街路樹や公園には本種による食害が毎年発生し, 市役所緑と花の課ではフェロモントラップによるアメリカシロヒトリの発生予察を発生期間中毎週行い,巣網の物理的除去と薬剤散布による幼虫駆除を行っている. 市役所の12年間のトラップ捕獲個体数記録と気象記録や位置情報との関係を解析した結果, 1世代目の幼虫の発生時期である6月の気温が発生パターンに強く影響し, 6月の高温による蛹期間の延長が擬似的3化を形成していると考えられた. 1世代目の幼虫を様々な温度条件の恒温室,及び野外のクワの木で袋掛けをして飼育し羽化時期を調査した結果, 蛹期間が著しく延長された個体や翌春まで羽化しない一化性個体の存在が同じ卵塊から確認された. 温暖化はアメリカシロヒトリにとって成長に適さない高温期間を長くし,世代数は減る方向へ向かっていると考えられた.


日本生態学会