| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-012 (Poster presentation)

八王子市松木に残存する都市の植物群集構造の解析

*松澤琢(首都大・理工・生命),可知直毅,鈴木準一郎(首都大・理工・生命)

東京都八王子市の首都大学東京構内の緑地を調査地とし、都市に残存する植物群集の構造を解析した。緑地の大部分は、屋敷林や薪炭林だったが、1991年の大学移転前から管理されていない。ここに、幅1 m、奥行き4 mの小区616個を連ねた帯状の調査区を設置した。各小区の中心部で、標高や土壌pH、夏と冬の開空度の環境条件を測定した。また、小区に生育する高さ0.5 m以上の木本植物の種や位置、胸高(高さ1.3 m)または地ぎわの周囲長を測定した。高さ0.5 m未満の木本植物と草本植物を下層植生とし、各小区で出現した種を記録した。さらに、小区の中心部で、0.25 m四方の区画内に生育する下層植生の地上部を刈り取り、その乾燥重量を秤量した。

調査区の平均標高は121.33 mで、小区の標高差は最大で30.4 mであり、地形は起伏に富んでいた。土壌の平均pHは5.87、平均開空度は、夏には10.0%、冬には17.8%だった。49種の737本の木本植物が存在し、アオキの個体数が最多で、ヒサカキ、シラカシが続いた。調査区の積算胸高断面積では、シラカシが最大で、次にコナラだった。シラカシでは、胸高直径15 cm未満の90個体が存在したが、コナラでは存在しなかった。下層植生には192種(木本88種、草本104種)が存在し、アズマネザサが最も多くの小区で見られ、アオキ、コナラが続いた。アズマネザサは、コナラと小区に共存し、シラカシとは排他的だった。調査区の積算乾燥重量では、アズマネザサが最大で、シラカシが続いた。

以上から、シラカシとコナラが優占する調査地では、コナラの稚樹が不在のため、シラカシだけが更新すると予想され、その更新には現存量の大きいアズマネザサの分布が影響する可能性がある。


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