| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-023 (Poster presentation)

ササの一斉枯死と林冠構造の違いがブナ林の更新動態に与える影響

*髙木豊大・佐藤朋華・松尾歩・阿部みどり・井上みずき・星崎和彦・蒔田明史(秋田県立大・生物資源)

ササ型林床のブナ林では、林冠ギャップ形成やササの動態が森林の更新や種多様性に大きな影響を与える。ササが一斉枯死すると林床は明るくなるが、実生個体群によるササ群落の回復に伴い林床の光環境は悪化する。そのため、枯死後のササ群落の成長が樹木の更新に影響を与えると考えられる。秋田県十和田湖周辺のブナ林では、1995年に林床を覆っていたチシマザサが一斉枯死し、多くの樹木実生が定着した。本研究では、ササ枯死後19年を経てササ群落がほぼ元の状態まで回復していると予想された段階での定着稚樹集団の実態を明らかにすることを目的とした。

秋田県十和田湖周辺のブナ林では、1996年に1haの継続調査区が設置されており、林冠とササの状態の組み合わせにより調査区内は4つの環境に区分されている。各環境区分に1m×1mのササ調査枠が設置され、ササの実生発生後、毎年ササの稈密度及び群落高が測定されている。さらに、2000年から10m×10mの稚樹プロットが設置され、4度にわたり高木性樹種の稚樹個体の樹種と自然高が測定されている。2014年にも同様に調査を行った。

ササの群落高と稈密度は、19年間で枯死以前の群落高および稈密度まで回復していた。ササ生残区に比べて、ササ枯死区の稚樹密度は著しく高く、ササの枯死が稚樹バンクの形成に寄与していたことが明らかとなった。稚樹の多くは、その年のササ群落高よりも下層に生育していたが、ササ群落よりも高い稚樹もみられた。一方、林冠構成種のブナは、ほとんどがササ群落より低かったが、他樹種に比べると生存率が高く、また年間平均15cmもの樹高成長を示す個体もみられた。これらのことから、耐陰性が高いブナが更新に成功するかどうかを明らかにするには、さらなるモニタリングが必要である。


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