| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-025 (Poster presentation)

湿原内部に成立した矮性ハンノキ群落の動態と養分利用

*見原悠美(北大・環境科学院), 矢部和夫(札幌市大・デザイン), 植村滋(北大・FSC)

湿原は地球環境に対して重要な役割を持つ生態系であるが、近年は人間活動に起因する湿原の量的質的な変化が世界的に懸念されている。日本最大の湿原である釧路湿原においても、その変化の一つである湿原内部の樹林化が問題となっている。同湿原広里地区では河川から遮断された後、1970年に内部の樹林化が確認され現在は林分構造の異なる矮性ハンノキ群落が同所的に存在しているが、その原因は解明されていない。そこで本研究は、これらの矮性ハンノキ群落の侵入時期と群落動態および群落-立地間の養分動態を明らかにすることを目的とした。同地区内の景観が異なる3つの群落を樹高が高い順からH, M, Lサイトとし、各サイトの個体齢、林分構造、稈の回転率およびバイオマス変化量/年、地下水および当年枝・枯葉の養分(窒素、リン)濃度について調査した。また、河川水が流入する安原地区の矮性ハンノキ群落(Y)との比較も行った。

結果、個体齢は全サイト間で有意差がなかった。林分構造について、株密度は樹高が低い群落で高く(L>M>H>Y)、樹冠面積・稈直径・株あたりの稈数は樹高が高い群落で高い(Y>H>M>L)傾向を示した。動態について、稈の回転率の林分構造の違いによる差は示されなかったが、バイオマス増加量/年は樹高の高い群落で高い傾向(Y>H>M>L)を示した。養分動態について、立地養分は広里地区内では有意差が認めらなかったが、地下水のNH4+濃度は広里よりも安原で高い傾向を示した。3つの矮性ハンノキ群落は侵入時期が同時期にもかかわらず、年間生産量が異なることで林分構造を変えていることがわかった。生産量が異なる要因に関しては、養分利用特性と葉寿命が関係することが示唆され、今後当年枝への養分再吸収量ついて分析することで明らかに出来ると考える。


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