| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-037 (Poster presentation)

春植物が生えていた場所は他の季節にどうなっているのか -光と植生の視点から-

*大塚勇哉(明大・農), 倉本宣(明大・農)

春植物は、落葉広葉樹林に依存する特殊な生活史を持つ植物群である。しかし、これらの植物は雑木林の衰退とともに消えつつある。故に春植物をテーマとし、生態調査を行っている論文は多いが、そのほとんどは春季に行われており、春以外における研究例は少ない。そこで本研究では、林内におけるイチリンソウ・ニリンソウを主とした複数の春植物の生育に適した、季節別の植生や光環境に着目し、その特性を明らかにすることを目的とする。神奈川県境川沿いにある2つの異なる河畔林緑地で調査を行った。

2つの調査地に2m×20mの帯状の調査区を2つずつ設置し、その中に2m間隔で2m×2mのコドラートを設定した。2014年および2015年の春季と夏季に種別の植被率、全植被率、群落高を記録した。また、光環境については、2015年3月と9月に、各コドラートにつき光量子束密度を計測、林外の値を100%として相対光量子束密度とした。

イチリンソウ・ニリンソウの植被率が一定量を越えているコドラートでは相対光量子束密度が30%を超えており、この数値が両種の植被率に影響する基準であることが示唆された。両種の植被率が一定以上あるコドラートは、クラスター分析により複数の群落タイプに分けられた。解析の結果、コクサギの生育するコドラートでイチリンソウ・ニリンソウの植被率が増加する傾向が示唆された。

上記の調査結果については、イチリンソウ・ニリンソウを中心に複数の春植物について植生と光環境の観点から考察を行う予定である。


日本生態学会