| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-041 (Poster presentation)

葉と根を人工的に切除した植物の成長様式は、給水頻度によって変化するか。

首都大・理工/ 木村ひかり(*), 可知直毅, 鈴木準一郎

植物が葉や根を失う機会は多い。体の一部を失った植物の成長は周囲の環境条件によって影響される。また、残存した部位では、補償成長がしばしば見られる。さらに、失われた部位によって、その後の植物の成長に影響する環境条件が異なる。そこで、給水パターンが異なる環境下で、葉や根を切除した植物の反応を評価するため実験をおこなった。

首都大学東京の実験圃場のビニールハウスにて、切除と給水頻度を2要因とする栽培実験を、コマツナとホソムギを用いて行った。切除には、葉の切除、根の切除、葉と根の両方の切除、切除なしの4水準を、給水頻度には、高頻度と低頻度の2水準を設定した。切除は、播種後1ヶ月の植物に実施し、切除後に給水頻度を変え、コマツナでは2週間の、ホソムギでは3週間の栽培後に、刈り取った。

切除と給水頻度を2要因とした分散分析の結果、コマツナの個体重に対しては、要因の効果は有意には見られなかった。しかし、根重量に対しては、切除の効果が有意にみられた。ホソムギでは、個体重、葉の重量、根の量いずれに対しても、切除の効果が有意にみられた。

コマツナの個体重で切除の効果がみられなかったのは、補償成長の結果、失われた葉量を上回る葉が生産されたためだと考えられる。失われた根量は葉量よりも少なかったのにもかかわらず、切除の効果がみられたのは、根の切除の影響の大きさを示すと考えられる。一方、ホソムギで見られた、個体重、葉の重量、根の重量の有意な効果は、コマツナとは異なり、ホソムギでは根の割合が高かったので、切除の影響が大きかった可能性がある。そのため、切除後の成長量が異なったのだろう。


日本生態学会