| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-054 (Poster presentation)

ツユクサ属2品種における雄花生産の季節変化とその要因

*邑上夏菜,勝原光希,丑丸敦史(神戸大学・発達科学部)

全ての株が両性花と雄花を咲かせる雄性両全性同株は世界で約4000種が知られており、両性花から雌雄異株への進化の中間的な性表現の一つであると考えられている。しかし、雄性両全性同株における雄花生産の適応的意義については初歩的な理解しか進んでいない。

雄性両全性同株の中には、各個体における雄花の生産量が固定しているものと、可塑的であるものが知られており、可塑的な雄花生産を行う種では、利用できる資源が少ない花は雄花となることが報告されている。個体内もしくは花序内での開花の進行とともに、後発の花では利用可能な資源がより制限されるために開花後期では雄花の比率が増加することが予想されるが、雄花の増加は、限られた両性花の胚珠をめぐる雄間競争を激化させるだけでなく、両性花における種子生産の可能性を減少させる非適応的な形質であるとも考えられる。しかし、これまで資源量に依存した可塑的な雄花生産と雄花比の季節的変化の関係を調べ、その適応的な意義を検討した研究はない。

本研究では、可塑的な雄花生産を行う雄性両全性同株のツユクサCommelina communisとケツユクサC. communis f. ciliateの栽培個体を用いて、全開花期間を通して生産した全花の花序内の開花位置と性表現を記録し、季節変化に応じた相対的な雄花生産量を調べた。加えて個々の花の利用できる資源量の指標として、個体のバイオマスや花序サイズ等を測定し、雄花生産との関係を解析した。さらに花序内における可塑的な雄花生産のメカニズムを詳しく調べるために、花序内の果実除去実験を行った。これらを踏まえて、雄花の生産比の季節変化がみられるのか、雄花生産比を変化させる要因は何なのか、について検討を行った。


日本生態学会