| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-070 (Poster presentation)

街路樹であるイチョウの炭素安定同位体比及び光合成機能の季節変化

*木下智光(京工繊),半場祐子(京工繊),西田圭佑(京工繊),清水啓史(京工繊)

街路樹の光合成によるCO2吸収効率を高めることは、CO2削減量を増加させることに繋がるため、温暖化対策の一つとして期待される。街路樹の光合成は気温や湿度など様々な環境因子に影響されるため、環境因子の季節変化に応じて変化する。また、大気のCO2濃度も植物の生理的活動などに関連して季節変化し、街路樹の光合成に影響を与えている。街路樹による年間のCO2吸収効率を見積もる為には、大気CO2濃度やCO2の起源を含めた大気CO2環境及び光合成機能の季節変化を把握する必要がある。本研究では、街路樹として国内で最もよく用いられているイチョウGinkgo bilobaを対象に、その光合成機能の季節的な変化と炭素安定同位体比(δ13C)を測定した。さらに、WS-CRDS式ガス分析装置により、大気のCO2濃度とδ13C を連続測定した。大気δ13Cは、大気CO2に対する人為起源のCO2の寄与率を指定するのに有効である。本年度は、春季(展葉の開始した5月)から落葉季(10月)に測定期間を拡大し、1 ) 街路樹の光合成機能の変化、2 ) 大気中のCO2濃度及びδ13Cを調べた。光‐光合成曲線及びA/Ci曲線から解析したイチョウの光合成パラメータは共に、春季から夏季までは高く、秋季にかけて低下する傾向を示した。これは昨年の測定結果とも一致していた。一方、水利用効率(WUE)は春季から秋季にかけて、夏季にのみ減少する傾向が見られた。これについては、街路樹のδ13Cを指標として求めたWUEとも比較検討を行う予定である。また、δ13Cの連続測定より、大気CO2濃度とδ13Cにおける日、週、月単位での周期的な変化が観察出来たため、これらの測定結果を利用した大気CO2起源推定のモデルについても提案する。


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