| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-107 (Poster presentation)

クロロフィル蛍光パラメータによる冷温帯林の光合成機能の解明

*辻本克斗,川島在悟,加藤知道(北大・農),斎藤琢,村岡裕由(岐阜大・流域圏),秋津朋子,奈佐原顕郎(筑波大・生命環境)

植生は環境からストレスを受けており,それによって光合成の機能は日・季節によって変動する.近年,陸域生態系の光合成機能を衛星・地上リモートセンシングから推定する試みがとられているが,その中でもクロロフィル蛍光(ChlF)を利用した光合成ストレスの検出は大変重要であると考えられている.しかし,それらは植生を上方のみからモニタリングするため,特に生態系の中層・下層に多くのバイオマスを抱えている森林生態系について大きな観測誤差が生じる可能性が高い.したがって,より正確に光合成機能を推定するには,植生の環境ストレスの鉛直分布を調べなければならない.そこで本研究では,森林生態系の各層における光合成のストレス状態と環境要因(光・温度)との関係について調べた.観測は,岐阜県高山市のスギ・ヒノキ人工林と落葉広葉林で行った.サイトにはそれぞれ渦相関フラックスタワーが建っており,個葉にアクセスできる.測定は2015年6月,8月,10月に,それぞれのサイトでおこなった.2台の蛍光測定器(FlourPen FP100, FluorPen FP100-MAX, PSI)を用いてクロロフィル蛍光パラメータと光合成有効放射(PAR)を測定し,放射温度計(放射温度計B, シンワ測定)で葉温を測定した.これらを1日5回,日の出直後から日の入りまでおこなった.6月のスギにおいて,上層の葉群が中・下層に比べて量子収率Qyが日中により低下し,ストレスを受けていることがわかった.それに比べミズナラについては層ごとに違いは見られなかった.これは,弱い光でもQyが低下するほどミズナラの林床葉群のクロロフィル含量が少ないためであると考えられる.


日本生態学会