| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-141 (Poster presentation)

無傷のマンゴーはミバエの寄主植物なのか

*藤井暢之, 本間淳, 沢田裕一, 西田隆義(滋賀県大・環境科学)

ミバエ類は深刻な被害をもたらす害虫を多く含み、熱帯アジアにおいてはBactrocera carambolae (BC) とB. papayae (BP) が果樹の主要害虫である。ともに広食性であるが両種の原産地ジャワ島では、BCはスターフルーツを、BPはマンゴーを主に利用していることが分かっている。両種の寄主利用の違いをもたらす要因を明らかにするために、これまで幼虫の発育パフォーマンス、母親の産卵選好性と産卵能力について調べた。しかし、いずれの要因でも、BCが最も好適なマンゴーではなく、スターフルーツを主要な寄主とする理由を説明できなかった。そこで、寄主利用の種間差を生み出す要因として、繁殖干渉について検証した。すなわち、マンゴーを主要寄主とするBPからBCに対して一方的な繁殖干渉があるという仮説を立てて、これを検証した。

2種の比率を変えて合計24ペア (BC:BP=24:0, 16:8, 12:12, 8:16, 0:24) になるようにしてケージ内で自由に交配させ、16時~18時に交尾行動 (翅振動行動とマウント) の起こった時刻と頻度を記録した.観察終了時点で交尾が成立していたペアは隔離し,産卵させて育った蛹数を計数することで,その繁殖成功を確かめた.

配偶時間帯についてみると、両種とも単独区では違いは見られず、混在区では多数派の種が先に交尾を開始する傾向があった。一方メス1個体あたりの繁殖成功は両種で対照的で,BCでは自種の割合が低くなるにつれて減少したが,BPでは逆に増加した。このことは,BPからBCへ一方的な繁殖干渉があることを示している.つまり,BCが最も好適と考えられるマンゴーをあまり利用しないのは、繁殖干渉に強いBPがマンゴーをよく利用するためという仮説が支持された。


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