| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-142 (Poster presentation)

生育初期の食害による誘導抵抗性が植食者の季節動態に与える影響

*古谷祐平,太刀川翼,石崎智美(新潟大・院・自然研),中山椋希(新潟大・理)

多くの植物は,対植食者戦略として構成的な抵抗性や誘導的な抵抗性を有することが知られている.また,植物の示す抵抗性の種類や発現時期は,植食者の種類や密度に影響を与える.これまでに,ミズヒキを利用する植食者の時間的な変化を調べたところ, 4〜5月に出現するドクガの幼虫による食害が多い個体では,6月以降に出現するハダニによる食害が少ないことが示されていた.そこで,本研究ではドクガ−ハダニ間の相互作用が生じる要因を明らかにすることを目的とした.

まず,展葉期である5月にミズヒキを,無傷個体(葉に食害を受けていない個体),被食害個体(既に葉に食害を受けていた個体),切除処理個体(無傷個体に葉の切除を行った個体)に分類し,その後7月下旬と10月上旬に食害の種類と量を測定した.葉1枚ごとにドクガの被害とハダニの被害の大きさを比較したところ,7月下旬においグループに関わらず,ドクガ被害が大きい葉ほどハダニ被害が小さかった.すなわち,ドクガ幼虫が葉を食べることでハダニが利用できる葉面積が減少したと考えられ,葉をめぐるドクガからハダニへの非対称な競争が生じていたと考えられる.一方,ドクガの被害が葉面積に占める割合の25%以上50%未満の葉では,無傷個体に比べて被食害個体でハダニ被害が有意に小さかった.従って,生育初期のドクガ被害を受けていた個体では,全身性の抵抗性を示しており,ハダニ被害が少なくなったと考えられる.この抵抗性は,ドクガ被害によって誘導された可能性と,ミズヒキの個体によって構成的抵抗性の種類が異なった可能性が考えられる.以上のように,直接的および間接的な作用によって,ミズヒキを利用するドクガ幼虫とハダニは互いに排他的な関係であることが示された.


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